勤務医に適用する上限水準は、通常の時間外労働に関しては一般労働者と同様、月45時間、年360時間以内を基本とし、通常予見できない臨時的な必要がある場合は、休日労働を含めて月100時間未満、年960時間以内を上限とする。
ただ、医師の業務は臨時的な必要性が生じる時季や頻度が予見不能であることから、45時間を超える月を年6ヵ月までに限る規制は適用しない。
また、医師の公共性・不確実性を踏まえれば、ある月の時間外労働が長かったため翌月必ず短くして平均値を調節することは困難なため、複数月平均80時間以内の規制も適用しない。

厚生労働省は3月13日、医師の働き方改革に関する検討会を開き、2024年4月から適用する医師の時間外労働規制のあり方について報告書案を示した。
勤務医に適用する基本的な上限水準を月100時間未満、年960時間以内とするほか、地域医療提供体制の確保に必要な暫定特例水準、医師育成のために必要な集中的技能向上水準(月100時間未満年1,860時間以内)も設ける。
人命を預かる公共性、不確実性などの観点から、一定の健康確保措置を義務づけることで月の上限を超える例外も認める考えだ。
検討会では、年度内の取りまとめに向けて検討を急ぐ。 

経過措置として設ける地域医療確保暫定特例水準は、地域医療の観点から必須とされる機能を果たすためやむなく長時間労働となるなど、一定の要件を満たした医療機関を都道府県が特定し、適用する。時間数の上限については、現状の労働時間の分布の上位1割に該当する勤務医を2024年4月の施行までの約5年間で確実に短縮させていくという考えから、休日労働含めて月100時間未満、年1,860時間以内と設定する。
なお、経過措置の終了目標年限は、都道府県単位で医師偏在を解消する目標年である2035年度末とする。

集中的技能向上水準については、①初期研修医及び専門研修プログラムに参加する後期研修医②医籍登録後の臨床経験が6年以上の者であって、一定期間集中的に高度特定技能の育成に関連する診療業務を行う医師――を対象に適用。
上限時間は地域医療確保暫定特例水準と横並びに休日労働含めて月100時間未満、年1,860時間以内とする。

①初期研修医及び専門研修プログラムに参加する後期研修医②医籍登録後の臨床経験が6年以上の者であって、一定期間集中的に高度特定技能の育成に関連する診療業務を行う医師――を対象に適用。
上限時間は地域医療確保暫定特例水準と横並びに休日労働含めて月100時間未満、年1,860時間以内とする。

一方、義務づけられる健康確保措置は、大きく2つ。一つは、時間外労働が月45時間を超えた労働者に対して実施される健康福祉確保措置に追加する措置として、①連続勤務時間制限28時間以内、9時間の勤務間インターバル(当直明けは18時間)、これらがやむを得ず実施できなかった場合の代償休息。もう一つは、月の時間外労働が80時間を超えて疲労の蓄積が確認された医師に対し、②医師による面接指導及び必要に応じた就業上の措置の実施だ。

勤務医に適用される一般水準においては、医療機関の管理者に対し、①を努力義務とし、やむを得ず月100時間の上限を超えて時間外労働をさせる場合の要件として②を義務づける。特例の水準が適用される医療機関の管理者に対しては、①②いずれも義務づける。 

ニュース提供元:株式会社 社会保険研究所

この記事を書いた人

ひだまり社労士